ちょっと大人の雰囲気を醸し出す小説を紹介します。著者は、桜木紫乃、窪美澄、山田詠美、小川洋子、堀江敏幸、村山由佳、北村薫、中村文則。
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー
桜木 紫乃
内容紹介
北国のキャバレーで働きながら一人暮らしをする20歳の章介は、新しいショーの出演者3人と同居することになる。だが店に現れたのは、華やかな売り文句とはほど遠いどん底タレントたちで…。『小説野性時代』連載を単行本化。
著者紹介
作家,元・裁判所職員,第149回直木賞受賞
緋の河
緋の河
桜木 紫乃
内容紹介
男として生まれた。でも、きれいな女の人になりたいな-。己の信じる道を進んだカルーセル麻紀の波瀾万丈の人生を、事実を元に、想像力を最大限に加えて描く。
『北海道新聞』『中日新聞』ほか連載に加筆修正し単行本化。
著者紹介
作家,元・裁判所職員,第149回直木賞受賞
今回もなかなか分厚い大作だが、桜木紫乃の描く世界は読み進める目と手が止まらない。場面や情景が浮かぶのも流石。時代や環境に翻弄されながらも力強く生きる主人公は本当に唯一無二で魅力的であった。
裸の華
裸の華
桜木 紫乃
内容紹介
舞台上の怪我で引退を決意した、元ストリッパーのノリカは、故郷で店を開くことに。ダンサーを募集すると、2人の若い女性が現れて…。踊り子たちの鮮烈な生き様を描く。
『小説すばる』掲載を加筆・修正。
著者紹介
作家,元・裁判所職員,第149回直木賞受賞
ストリッパーとして誇りを持ち、ストイックな生活やからだ作り、自ら振付していたダンサーが引退。第二の人生として開店した自分の店で、新人ダンサーを振付、演出をしていく物語。何かに真剣に打ち込んだことのある人なら、この苦悩に共感できるはず。そして、生きること、死ぬことへの向き合い方も変わる一冊。
ホテルローヤル
ホテルローヤル
桜木 紫乃
内容紹介
湿原を背に建つ北国のラブホテル。客、経営者家族、従業員はそれぞれ問題を抱えていた。「非現実」を求め、扉を開いた彼らの心の機微を鮮やかに描く。『小説すばる』掲載に加筆・修正のうえ書き下ろしを加えて単行本化。
著者紹介
作家,元・裁判所職員,第149回直木賞受賞
ホテルローヤルを軸に、訳ありな人たちが葛藤したり諦めを抱えながら日々を生きる様を描いた一冊。どれも薄暗いイメージ付きまとうが、桜木紫乃の文章力が読み進めるのを離さない。これ、映画化したやつも見てみよう….
トリニティ
トリニティ
窪 美澄
内容紹介
50年前、出版社で出会った3人の女たちが半生をかけ、何を代償にしても手に入れようとした<トリニティ=かけがえのない3つのもの>とは? 昭和・平成から未来へと繫ぐ希望を描く。
『小説新潮』連載を単行本化。
著者紹介
1965年東京都生まれ。フリーの編集ライターを経て、「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞しデビュー。「ふがいない僕は空を見た」で山本周五郎賞を受賞。
実在の人物や雑誌から着想を得て書かれた長編小説。リアリティーがあってのめり込みものがあった。女性が働いたり家庭を支えていくことの難しさや苦悩が生々しく描かれていて、それでも生き抜くための強い芯があった。今まで読んだ著者の本とはやや印象が異なるが、これはこれでまた惹き付けられた一冊。
つみびと
つみびと
山田 詠美
内容紹介
灼熱の夏、彼女はなぜ幼な子2人を置き去りにしたのか? 追い詰められた母親、死に行く子どもたち…。痛ましい事件の深層に分け入る、迫真の長編小説。
『日本経済新聞』夕刊連載を単行本化。
著者紹介
1959年東京都生まれ。「ベッドタイムアイズ」で文藝賞、「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」で直木賞、「トラッシュ」で女流文学賞を受賞。
あとは切手を、一枚貼るだけ
あとは切手を、一枚貼るだけ
小川 洋子/堀江 敏幸
内容紹介
かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。2人を隔てた、取りかえしのつかない出来事。14通の手紙に編み込まれた哀しい秘密とは…。
『アンデル小さな文芸誌』連載を単行本化。
著者紹介
1962年岡山県生まれ。早稲田大学文学部卒業。「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞、「妊娠カレンダー」で芥川賞、「博士の愛した数式」で読売文学賞、本屋大賞受賞。
難読本。この一言に尽きる。。。ガクッ。
はつ恋
はつ恋
村山 由佳
内容紹介
海の近くの日本家屋に愛猫と暮らす、小説家のハナ。2度の離婚を経て、人生の後半をひとりで生きようとしていたが…。村山由佳の作家デビュー25周年記念作品。
『ハルメク』連載を単行本化。
著者紹介
1964年東京都生まれ。立教大学卒業。「天使の卵」で小説すばる新人賞、「星々の舟」で直木賞、「ダブル・ファンタジー」で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を受賞。
主人公が質素な生活を心掛け、田舎住まいを愛し、草花を愛でる様は丁寧な人生そのもの。忙しい生き方をしたからこそ味わえるものと想像できる。自然のなかで育った頃が懐かしくなる優しい一冊。
八月の六日間
八月の六日間
北村 薫
内容紹介
40歳目前、文芸誌の副編集長をしているわたしは、日々の出来事に心を擦り減らしていた時、山の魅力に出会った。山登りは、わたしの心を開いてくれる。そんなある日、わたしは思いがけない知らせを耳にして…。
著者紹介
1949年埼玉県生まれ。作家。89年「空飛ぶ馬」でデビュー。「夜の蟬」で日本推理作家協会賞、「鷺と雪」で直木賞受賞。他の著書に「中野のお父さんは謎を解くか」など。
登山はしたことがない。興味もほとんどなかった。けれど本作を読んで、登山の面白さ、爽快感、過酷さ、怖さ、行き交う人々との触れ合いについて知ることができた。本はこういうところがよい。
教団X
教団X
中村 文則
内容紹介
自分の元から去った女性は、公安から身を隠すカルト教団の中へ消えた。絶対的な悪の教祖と4人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める…。
『すばる』連載を単行本化。
著者紹介
1977年愛知県生まれ。2002年「銃」で新潮新人賞を受賞しデビュー。05年「土の中の子供」で芥川賞、16年「私の消滅」でドゥマゴ文学賞を受賞。
とにかく分厚くて小難しくて途中で何度もくじけそうになった。読了後の感想はとにかく、全部読んでやったぜ!(笑)
思想と宗教と地域と戦争、繋がるんだ…という印象。
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桜木紫乃の描く物語はいつもどこか寂しさがあり、温もりがあり、別れがある。本当にどこかでいそうな人間をリアルに表現するのがとてもうまいと思う。人間臭さや泥臭さ、目を背けたいような追い続けたいような、読んでいるうちも気になるし、その後がどうなったかもとても気になる。それにしても、北國の冬の寒さを書かせたら日本一と思う。