お笑い芸人が書いた小説

お笑い芸人が書いた小説を集めました。漫才師やコント師として劇場でライブを行ったり、テレビでバラエティ番組で活躍する以外の文才をうかがい知ることができます。


むき出し/兼近大樹


むき出し
兼近 大樹


内容紹介
小さい頃から、殴って、殴られるのが普通だった。上京して芸人となった石山の前に現れる、過去の全て。ここにいるのは、出会いと決断があったから-。お笑いコンビ「EXIT」の兼近大樹による初小説。

著者紹介
1991年北海道生まれ。お笑いコンビ「EXIT」として活動している漫才師。音楽活動や洋服ブランドのプロデュースなども行う。

本作はあくまでフィクションとされているが、出身地や主人公の名前、その他モロモロから、きっと著者の私小説に近いんだろうなと感じる一冊。経験してなきゃ書けないような所作や感情も多くてテレビで見る笑顔の裏には生きるにたいへんな過去があったと想像してしまう。

生まれた環境で人は育ち作られていくこと、純粋な気持ちがあれば何かきっかけさえ手に入れられれば変わることができることを教えてくれる、厳しくも優しい本。


人間/又吉直樹


人間
又吉 直樹


内容紹介
38歳の誕生日に届いた、ある騒動の報せ。何者かになろうとあがいた季節の果てで、かつての若者達を待ち受けていたものとは? 又吉直樹、初の長編小説。『毎日新聞』連載を加筆し単行本化。

著者紹介
1980年大阪府寝屋川市生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。コンビ「ピース」として活動中。2015年『火花』で第153回芥川賞受賞。著書に『第2図書係補佐』『東京百景』、せきしろとの共著に『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』、田中象雨との共著に『新・四字熟語』、堀本裕樹との共著に『芸人と俳人』がある。

生きるうえでの葛藤、憤り、他人との距離感。そうした自分の不器用さが粛々と積み上げられた一冊。わかる気もするし、わからん部分も当然ある。生きるって苦しいよな。。。そして太宰治『人間失格』を改めて読みたくなる。

MEMO

「しんどいことなんて誰にでもあるとおもうねんけど、みんな平気そうな顔して暮らしてるから偉いよな。自分が弱いだけなんかな」

MEMO

「最近、いつも見ていたはずの風景が、なぜか美しく見えるねん。….これなんやろうなって考えてたら、もしかして死者の目なんじゃないかとおもった。….一度、死んでもう二度とこの世界の風景を見ることが叶わない人間にな、もう一度だけ景色を見る機会を与えたら、こういう風景に映るんじゃないかなとおもって。….だから、いまが尊いと最近おもうようになった。ほとんどの時間を忘れてしまうから。」

MEMO

自分達がタレントを食わせているという意識をもつのは自由だが、自分達が食わせている人が失敗したときは激しく罵っていいなどという考えはおかしい。本人に直接ぶつけられる罵倒は仕事を削るのではなく、命を削る行為だということに気づくべきだ。


あのコの夢を見たんです。山里亮太短編妄想小説集


あのコの夢を見たんです。
山里亮太短編妄想小説集

山里 亮太


内容紹介
菅井友香(欅坂46)、広瀬すず、松岡茉優…。旬な女優・アイドルをモデルに綴った、芸人・山里亮太による短編妄想小説集。『B.L.T.』連載の中から人気の高かったストーリー16編を厳選し、加筆・修正して書籍化。

著者紹介
1977年生まれ。千葉県出身。関西大学文学部卒業。芸人。漫才コンビ「南海キャンディーズ」ツッコミ担当。著書に「ニュースの読み方教えます!」「天才はあきらめた」など。

南海キャンディーズの山ちゃんが、まだキモ芸人と言われ、じょじょにピンの仕事を増やしていたころに書かれていた短編小説。芸能界に実在する女優やアイドル、モデルなど美女たちに当て書きしているので読んでいてイメージがしやすい。ていうか、山ちゃんの妄想力すごい、ウケる。

また、この本を企画にしてテレ東が豪華な本人キャスト、山ちゃん役は仲野太賀でドラマ化。驚き。

山ちゃん自身もモテないキャラだったからこそ、こうした妄想小説を書いていたのに、今や蒼井優という女優の奥さまと結婚。人生何があるかわからない。


それでも花は咲いていく/前田健


それでも花は咲いていく
前田 健


内容紹介
神様、僕は病気ですか? 僕はごみのように燃えてなくなればいいですか? 9つの花に託された9人の人間、それぞれの衝撃的な性的魂の行方とは? タレント・前田健による処女小説、全9編を収録。

著者紹介
1971年東京都生まれ。十九歳の時に渡米。マンハッタンに四年間在住。在留中、ブロードウェイ・ダンス・センターでダンスと歌の個人レッスンを受ける。1994年に帰国後、タレント活動開始。一人芝居、モノマネ、バラエティ、ドラマ、映画と様々な分野で活躍。『それでも花は咲いていく』がはじめての小説となる。

オードリー若林のエッセイで紹介されていたので手に取ってみた一冊。著者の前田健は松浦亜弥のものまねや自らがゲイであることの告白が記憶として鮮明だが、著者紹介にあったNYのブロードウェイダンスセンターにダンス留学していたという経歴に驚きつつ(どうりでダンスが上手かったわけだ)、小説を読み始めると、何とも繊細で哀しいものばかり。でも、主人公たちは皆こころ優しく自分を弱者と認識している。

ああ、もっとこの人の小説が読みたかった!処女作が遺作なんて悲しすぎるよ・・・。偏見を持っている多くの人に読んで欲しい。特にデイジーの主人公がオリフを好きになったキッカケになった言葉は、本当にシビレる。

そして、前田健本人が監督で映像化されていることも、今になって知った。見てみたいと思う。


あの頃な/マンボウやしろ


あの頃な
マンボウやしろ


内容紹介
新型コロナウイルスは、人々の生活を一変させた。劇的に変化した世界で生きる人々の日常は、どこに向かっていくのか-。ラジオでコロナを報道し、リスナーの声を聞き続けた著者が、抱えてきた想いを昇華させた25本の物語。

著者紹介
元・漫才コンビ「カリカ」メンバー

元芸人・カリカ、現在は裏方で活躍中のマンボウやしろが描く、ブラックユーモア満載のショートショート集。

コロナ禍を題材にしたあるあるの飛躍や近未来をナナメ上に想像した物語それぞれが面白い。トーンはコロナにあわせて低いながらも、それに輪をかけた発想が読む手を早める。今このタイミングで読んでほしい一冊。


陰日向に咲く/劇団ひとり


陰日向に咲く
劇団ひとり


内容紹介
お笑い芸人・劇団ひとり、衝撃の小説デビュー! 「道草」「拝啓、僕のアイドル様」「ピンボケな私」ほか全5篇を収録。落ちこぼれたちの哀しいまでの純真を、愛と笑いで包み込んだ珠玉の連作小説集。

著者紹介
芸人,俳優,本名:川島省吾,元・スープレックス・所属

不器用に生きる人々をユーモアを交えながら描き、ほろりとさせる内容は、劇団ひとりのイメージとは程遠かったし、小説デビュー作というのも驚いた。

のちに、岡田准一、宮崎あおいらの出演で映画化もされ、そっちもよかった・・・。

今は小説に脚本、映画監督とバラエティ番組以外にも幅広く活動しているが、この作品が何よりその足掛かりとなった貴重な一冊。


ホームレス中学生/田村裕


ホームレス中学生
田村 裕


内容紹介
麒麟・田村のせつな面白い公園生活。13歳のときに突然住む家を無くし、近所の公園に一人住むようになった田村少年。ダンボールで飢えをしのいだ日々や、いつも見守ってくれた亡き母への想いが詰まった貧乏自叙伝。

著者紹介
お笑いコンビ・麒麟のメンバー

ベストセラーになった麒麟・田村の自叙伝。同世代の男子が、こんな壮絶な子ども時代を過ごしていたことに衝撃を受けた。バラエティ番組で面白おかしく語られるのは笑えるが、文字にするとなかなかで苦笑いしつつも、ものすごいブームになってお金持ちになってよかったね、と当時思った記憶がある。こちらも人気に乗じてドラマ化されている。

今は週7でバスケに興じていると相方がよくテレビで笑い話にしているが、今度はそちらの自叙伝でも読んでみたい。


イルカも泳ぐわい。/加納愛子


イルカも泳ぐわい。
加納 愛子


内容紹介
めくるめく脳内フェスティバルと、キレキレの言葉のサーカス-。お笑いコンビ「Aマッソ」加納愛子の初エッセイ集。

『Webちくま』の連載「何言うてんねん」に、短編小説「帰路酒」等の書き下ろしを加えた全40編を収録。

著者紹介
1989年大阪府生まれ。2010年に村上愛とお笑いコンビ「Aマッソ」を結成。ネタ作りを担当。

流れるような大阪弁とヘンテコな思想が面白すぎてピピっと読み上げてしまった一冊。Aマッソ、尖っているようでやや苦手意識があったが、本を読んでみたらワードチョイスや気になることのセンスが素敵で、いややっぱこの尖りが心地よいな、加納さん好きだわって思った。

案の定、最近はテレビでよく見かけるような売れっ子になっていて、なんかうれしい。


架空OL日記/バカリズム


架空OL日記
バカリズム

内容紹介
ジムに行くけどお腹はぽっこりのままの私、ジムで腹筋が割れてスタッフに間違われる同僚、天然すぎる後輩…。

芸人・バカリズムが、架空の女性(OL)になりきって書いた、可愛くて、可笑しい女子ワールド。

著者紹介
本名・升野英知(ますの・ひでとも)1975年、福岡県生まれ。95年、『バカリズム』を結成。2005年よりピン芸人として活動。升野英知名義で小説「来世不動産」(『東と西2』小学館文庫所収)を発表する。

本書はバカリズムが、こっそりOLになりすまし続けていたブログを文庫化したもの。本当にこんな女子いそうで、何で男子なのに女子あるあるが書けるんだろうと不思議で仕方がなかった。ユニークでシニカルでめっちゃふつうな日常。

その後、ドラマ化されたが、女主人公をバカリズム本人がやるという奇行も、なぜかしっくりくるという謎が面白かった。映像作品もオススメ。


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