アイドルとジェンダーについてマジメに考える本7選


アイドルという職業とジェンダーについて真摯に向き合い、マジメに考える本を集めました。推しがいる人やジェンダーについて知りたい人にオススメです。


アイドルについて葛藤しながら考えてみた


アイドルについて葛藤しながら考えてみた
ジェンダー/パーソナリティ/<推し>

香月孝史/上岡磨奈/中村香住/筒井晴香/いなだ易/DJ泡沫/金巻ともこ/田島悠来/松本友也

内容紹介
多様な実践が人気を集めるアイドル。だが、恋愛禁止などアイドルに抑圧を強いる問題も存在する。

アイドルの面白さと可能性、困難と問題性について、肯定・否定ではなく「葛藤しながら考える」ことの可能性を拓くための試論集。

著者紹介
1980年生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。

アイドルを『推す』ことの価値や意義、また倫理的側面に関する考察をマジメに論じている本。そのギャップが楽しく納得しつつハッとすることも多くてじっくり読める。

また、『ときめき』や『社会的な承認』といった恋愛に期待されがちな目的や機能が、恋愛を介することでしか得られないものではないはずだ、という考えと、それに変わる手段として『推し』が引き合いに出されているのも、興味深くうなずけた。

『推す』-『推される』関係は、職業に関わらず、より一般的な人間関係の特徴として新たな概念であるという主張も頷けて面白かった。

さらに、アイドルが一人の人格としてよりも、わかりやすく『キャラクター』として消費されていくこと、消費する側がジェンダーやルッキズムでジャッジしていまっていること、さらにその歪さについて気づかず慣れていることなどにも警鐘を鳴らしている。


アイドル保健体育


アイドル保健体育 
CDジャーナルムック 

竹中 夏海


内容紹介
月経困難症、摂食障害、性教育、身体づくり…。

振付師の立場から女性アイドルの心と身体を見続けてきた著者が、見えないものにされてきたアイドルの健康課題について解説。

産婦人科医や整体師等の専門家インタビューも収録。

著者紹介
振付師。ホリプロスポーツ文化事業部所属。アイドルや広告・MVなどの振付を担当している。


アイドルも、そのファンも、運営も、JKも、JCも、みんな一度はこの本で「アイドルの身体やこころ、女性アイドルと女性アーティストの歴史」を今一度学んで考えてみてほしい。

堅苦しく煩わしいと思う部分があるかもしれないけれど、それはすべて女性にとって必要なこと。

当事者は悩んでいることが解決するかもしれないし、周りの人にはアイドルへの見方が変わるかもしれない。子どもへの教育としてもオススメの一冊。


清く楽しく美しい推し活


清く楽しく美しい推し活
推しから愛される術

河西邦剛/松下真由美

 
内容紹介
推しから愛される“気持ちのいい推し活”とは。「出待ち」「チケット転売」「愚痴垢炎上」など6つの場面におけるNG行為とその根拠を、芸能法務に携わる弁護士の視点から解説する。
トラブル事例やQ&Aも収録。

著者紹介
弁護士。
主要取扱分野は芸能トラブル、エンターテインメント、メディア対応など。

推し活における「マナー違反」や「迷惑行為」、うっかりやってしまいがちなNG行為を、実際に芸能人の法律相談を受ける弁護士の立場で執筆している本。

法令とともに、その解説を具体例とともに説明してくれるのがありがたい。罰則規定のあるものも多く、気をつけないとなとビビる。

「推し」を愛するすべての人に、一読いただきたい。

MEMO

好きな思いが強いと、ネガティブな面など細かい部分ほど気になってしまいます。

MEMO

無意識に理想が生まれて、それを確かめるために推しのことを調べて、それを繰り返すなかで精神的に安心感を得ていく。これは対象が推しか否かに関わらず、人を好きになるプロセスと同じではないかと思います。

MEMO

出待ち行為をしているファン=アイドルにとっての脅威的な存在

推しを見たいという欲望から、執拗に出待ちをするファンに対しては「ルールより自分の欲望を優先する人」と感じるのではないでしょうか。人は男女問わずルールを守れない大賞には恐怖心を持ちます。


人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた


人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた
横川 良明


内容紹介
アイドル、アーティスト、俳優、芸人、スポーツ選手、アニメキャラ…。どんな推しも等しく尊い

「推し」と出会ったことで人生が劇的に楽しくなったイケメン俳優オタクが、「推し」のいる生活の喜びやちょっとした暗部を語る。

著者紹介
1983年生まれ。大阪府出身。
2018年、テレビドラマ『おっさんずラブ』に夢中になり、あり余る熱情と愛を言葉に変えて書いた「note」が話題となり、そこからテレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムで引っ張りだこのライターとなる。

男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。

一度でも推したことのある人には激しく同意、うなずきまくりの一冊。

特におおっぴらに推し活できていない恥ずかしがり屋系のファンには、同士ができた感激を覚えるであろう本。

著者がライターだけあって、ワードセンスが秀逸すぎて全編通してめっちゃ面白い。

現役で何らかのファンな人には冷静に活動を見つめ直すためにも、ぜひ今読んでほしい。


これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン


これからの男の子たちへ
「男らしさ」から自由になるためのレッスン

太田 啓子


内容紹介
「男らしさ」の呪縛は何歳から始まる? わが子をセクハラ加害者にしないためには?

男子2人を育てる弁護士ママが悩みながら考えた、ジェンダー平等時代の子育て論。小島慶子らとの対談も収録。

著者紹介
弁護士。神奈川県弁護士会所属。明日の自由を守る若手弁護士の会メンバーとして「憲法カフェ」を各地で開催。

本書は、セクハラや性暴力を社会からなくすために、特に「男の子がセクハラ・性暴力加害者に育たないようにするためには、どういった教育をすべきか」を中心に書かれている。

子どもが成長過程で培われる「ジェンダー」に対しての意識は、その親や周辺環境が与える影響が大きい。だからこそ、「歪んだ認識を植え付けないよう、幼い頃から段階を踏んで教育していく必要がある」。これを根本的な考え方や他国との比較とともにわかりやすく解説してくれる一冊。

子どもと接する機会がある人には特に読んでおいてほしい本だし、個人として知っておくべき本でもある。

また、メディアの在り方や変わってきた業界意識なども非常に興味深い。

例に挙げられた、子ども向けコンテンツであるドラえもん『しずかちゃんの入浴シーンは本当にほほえましいか?』という疑問においては、『性被害を娯楽にしており、性被害を軽視する感覚につながりやすい恐れがある』とされ、確かにそうだなと納得してしまった。

『有害な男らしさ』『男性優位』が許される社会感覚を、嫌々諦めながらも身に染み付いている自分がすこし恐ろしく思えた。


BLが開く扉 変容するアジアのセクシュアリティとジェンダー


BLが開く扉
変容するアジアのセクシュアリティとジェンダー
 
ジェームズ・ウェルカー


内容紹介
BLはアジアでは独自の変容を遂げ、大きな社会的影響力を持っていた-。世界のBL、LGBTQ、マンガ研究の第一人者たちが、BL分析から見えるアジアの現状と日本の特異性を解き明かす。
シンポジウムをもとに書籍化。

著者情報
1970年アメリカ合衆国生まれ。神奈川大学外国語学部教授。専門は日本近現代文化史、ジェンダー・セクシュアリティ、グローバリゼーション。

日本はもとより世界各国、特にアジアに焦点を当てBLを中心としたセクシャリティをマジメに論じている一冊。

言ってることは難しめだが、ドラマ『おっさんずラブ』が現実のゲイ男性やLGBTの間でも評判がよかったという記述があったり、アジア各国のBL文化と現実について語られているのは興味深い。

また、ドラマ『きのう何食べた? 』やアニメ『ユーリ!!! on ICE』などにも言及されていて、より身近に読める部分あり。

MEMO

日本においては現実のゲイ男性の存在とBL等の創作物とが分断されている。

しかしながら、BLを通じて日本ではゲイが受容されているという印象をもち、それに惹かれて日本にやってきて創作物と現実との違いに驚く中国人のゲイ男性も多いという。

MEMO

ドラマ『おっさんずラブ』こそが日本においてBL等の創作物と現実のLGBTとの溝を埋めるミッシングリングになりうるのではないか、ここから何かが変わり始めるのではないか、という予感をもった。

「百合映画」完全ガイド


「百合映画」完全ガイド
ふぢのやまい

 
内容紹介
百合と映画を愛する人に贈るガイドブック。

“王道の百合”や誰もが知る定番から、埋もれた名作、いっけん百合とは思われないだろうものまで、百合映画300本以上を紹介する。
 

ガイドブックの体をなしているので、新旧あわせて膨大な量の映画が紹介されている。

紹介者によってポイントは違えど、これだけひとつのテーマで集めたという根性はすごい。ただもう少し見たくなるような分類だとか、映画の出演者や百合っぽいというポイントが統一的に明記されていればベターだったかも。


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