青年男女が主人公の小説1

青年男女が主人公の小説を集めました。第1弾の著者は、窪 美澄、朝井 リョウ、彩瀬 まる、小手鞠 るい、町田 そのこ、吉田 篤弘、朝比奈 あすか、雨宮 まみ、乗代 雄介、絲山 秋子、安堂 ホセ。 


さよなら、ニルヴァーナ


さよなら、ニルヴァーナ 
窪 美澄

 
内容紹介
私の運命の人は、14歳で少女を殺した少年Aでした-。少年犯罪の加害者、被害者遺族、加害者を崇拝する少女、そしてその環の外にたつ女性作家。運命に抗えない人間たちの因果を描く。
『別册文藝春秋』掲載を加筆・修正。

著者紹介
1965年東京都生まれ。「ふがいない僕は空を見た」で山本周五郎賞、「晴天の迷いクジラ」で山田風太郎賞、「トリニティ」で織田作之助賞を受賞。


いろんな立場の人間から語られる話がそれぞれ繋がっていくさまは想像するしゾクゾクするし読み進めたいのに窪美澄ワールドが強すぎて休み休みでしか進めない。だけど長編、非常に読み応えあり。


私は女になりたい 


私は女になりたい 
窪 美澄

 
内容紹介
赤澤奈美は47歳、美容皮膚科医。シングルマザーとして息子を育て、老いた母の面倒を見ながら仕事一筋に生きていた。だがふとしたことから、14歳年下の元患者と事故に遭うように恋に落ちて…。
『小説現代』掲載を加筆修正。
 
著者紹介
1965年東京都生まれ。「ふがいない僕は空を見た」で山本周五郎賞、「晴天の迷いクジラ」で山田風太郎賞、「トリニティ」で織田作之助賞を受賞。

年の差カップル、久しぶりの恋。恋の高ぶりでうまく感情のバランスがとれず、自分の身の置き所と相まって崩れていく様はとてもリアルで切ない。円熟してから読むべきオトナのラブストーリー。


どうしても生きてる 


どうしても生きてる 
朝井 リョウ

 
内容紹介
死んでしまいたい、と思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない-。「健やかな論理」ほか全6編を収めた朝井リョウの短編集。現代の声なき声を掬いとり、ほのかな光を灯す。『小説幻冬』掲載を単行本化。

タイトルどおりの【どうしても生きてる】人たちが描かれている一冊。どの話も胸を締め付ける。男性の描写も女性の描写も本当にその人がそこにいるかのように思えてくるし、そうしてのめり込ませる筆者の文章力はすごい。生きるってツラいもんなぁ….。特にやるせない思いが書かれた『籤』は読んで欲しい。本当にこのタイトルはぴったりで胃にくる。

MEMO

「大人になればなるほどさ、傷ついたときほど傷ついた顔しちゃいけないし、泣きたいときほど泣いちゃいけないよね」


まだ温かい鍋を抱いておやすみ


まだ温かい鍋を抱いておやすみ
彩瀬 まる

 
内容紹介
“初恋の彼”との思い出の品である枝豆パン。病に倒れた父の友人が、かつて作ってくれた鶏とカブのシチュー…。“あのひと口”の記憶が紡ぐ、6つの食べものがたり。
祥伝社WEBマガジン『コフレ』等掲載を加筆修正。
 
著者紹介
1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で女による女のためのR-18文学賞を受賞しデビュー。「やがて海へと届く」で野間文芸新人賞、「くちなし」で直木賞候補、高校生直木賞受賞。

この本には、人の細やかな感情や行間を読むことのできない人がどの話にも登場する。日常生活には支障はないが、コミュニケーションとしては??となる人々。そうした溜まったイライラからこじれていく人間関係は何とも言えない。仕方ないんだけど、苦労するんだよなあ….。料理の表現はどれも美味しそう。


美しい心臓


美しい心臓
小手鞠 るい

 
内容紹介
好きな人の死を願うという感情は、果たして、愛情と呼べるのだろうか。もう逃げられない、愛に似て、非なるものから-。恋に溺れ、欲望に囚われた女と男を描く、狂おしさに満ちた愛の物語。

『好き』の無間地獄に堕ちていた主人公である”わたし”は、好きの気持ちをもて余し、安定を求めるがごとく心のどこかで好きな人の死を願っている。これを”愛情”と呼べるか。究極の美しい愛だとすればそうも思えなくもないが、島本理生解説との合わせ読みで納得するところあり。

MEMO

「美しい心臓を持て!純粋な生を生きよ!」


52ヘルツのクジラたち


52ヘルツのクジラたち 
町田 そのこ

 
内容紹介
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会う時、新たな魂の物語が生まれる-。

この本の感想をうまく表現する言葉が見つからない。家族とは、自分の人生とは、愛とは。自分のためにも、他人を思っていくためにも、ぜひ自分自身の目で、心で、多くの人に読んでほしい一冊。


おやすみ、東京


おやすみ、東京
吉田 篤弘

 
内容紹介
映画の小道具を探すミツキ、使わなくなった電話を回収するモリイズミ、昼夜が逆転した古道具屋イバラギ…。この街の夜は、誰もが主役-。都会の夜の優しさと、祝福に満ちた長篇小説。
『Webランティエ』連載を単行本化。
 
著者紹介
作家,装幀,クラフト・エヴィング商会・所属

都会は意外と狭い。ひょんなことから知りあい、つながり、不思議な夜が明けていく。穏やかでゆっくり進む一冊。まさに眠れぬ夜に読みたい本。


人生のピース


人生のピース
朝比奈 あすか

 
内容紹介
中高女子校で過ごした34歳の潤子、みさ緒、礼香。礼香が見合い結婚することになり、潤子は焦り、結婚相談所に入会。みさ緒もダメ男と手を切ってマンションを買おうとし…。「婚活」小説。
『小説推理』連載を加筆し書籍化。
 
著者紹介
ノンフィクション,出版社・勤

報道でたまにある政治家などの失言と撤回について、いつもモヤモヤしていたが、この本のなかにすっきり言いはなった一文があって納得した。
『失言って、思ってもいなかったことを言ったわけじゃなくて、ふだんから思っていたけど表に出さないようにしていたことを言っちゃうことだよね。実は本音でしょう』
途中、驚きのからくりがあったりしてホホウ。女性が感じるであろういろんな感情が集まっている一冊。


東京を生きる


東京を生きる
雨宮 まみ

 
内容紹介
九州で過ごした年月を、東京で過ごした年月が越えてゆく-。地方出身者すべての胸を打つ、著者初の私小説エッセイ。大和書房のホームページに連載した「東京」に書き下ろしを加え再編集。
 
著者紹介
フリーライター,元・ワイレア出版・勤

地方出身者がふとひとりになったときに東京や東京にいる自分に対して思うことを鏡のように写した一冊。どこか慌ただしく、充たしたい欲求にかられ、そして孤独である。ベッドサイドでまどろみながら読みたい本。


旅する練習


旅する練習 
乗代 雄介

 
内容紹介
中学入学を前にしたサッカー少女と、小説家の叔父。ふたりは、コロナ禍で予定がなくなった2020年の春休み、利根川沿いに徒歩で千葉の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出て…。『群像』掲載を単行本化。
 
著者紹介
1986年北海道生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。「十七八より」で群像新人文学賞を受賞し、デビュー。「本物の読書家」で野間文芸新人賞を受賞。

コロナ渦の緊急事態宣言前、日本中がソワソワしている状況下の話。あの頃の雰囲気がありありと思い出されるが、登場人物たちはとても穏やかで快活で読んでいてとても心が落ち着く一冊。そのなかでも時おり波があって、その度にぐっと心にも刺さってくる。


御社のチャラ男


御社のチャラ男
絲山 秋子

 
内容紹介
チャラ男って本当にどこにでもいるんです。一定の確率で必ず-。社内でひそかにチャラ男と呼ばれている三芳部長。彼のまわりの人びとが彼を語ることで、この世界と私たちの「現実」が見えてきて…。
『群像』連載を単行本化。

仕事もせず口ばっかり上手くて嫌みなチャラ男。それをとりまく人たちの語り口がすごくリアルで共感できる。いるいるこんなイヤなやつ。役職や関係、環境によって思うことは違うし、本人の主張も何というか….。平成から令和にかけての雰囲気も味わえる面白い構成と結末だった。

MEMO

「気をつけてね。なんでもないときに変な汗とか涙とか出たら、それ大体きてるから」

MEMO

誰だって自分が仕事を覚えたときのやり方が基準になるんだろうな、と思う。それがどん底の時代でも売れ始めた時代でも、会社が傾いているときでも。


ジャクソンひとり


ジャクソンひとり
安堂 ホセ

 
内容紹介
着ていたTシャツに隠されたQRコードから男が磔にされた動画が流出し、職場で嫌疑をかけられたジャクソン。仕方なく独自の調査を始めると、動画の男は自分だと主張する3人の男に出会い…。
『文藝』掲載を書籍化。

著者紹介
東京都生まれ。「ジャクソンひとり」で文藝賞受賞。

島国・日本で生まれ、日本で育った人には、面食らうであろう本。多様性について表面上は知っていても、日本を舞台にした小説でここまで芯を食ったものはないんじゃないか。

著者のルーツによるものが大きいと思うが、これからを生きていく中で読んでおくべきと思う一冊。ラストに向けての疾走感とハラハラ感がたまらない。


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