オトナの恋愛小説を集めました。著者は、森 瑤子、松浦 理英子、岸 政彦、林 伸次、天童 荒太、松井 久子。
リリアン
リリアン
岸 政彦
内容紹介
街外れで暮らすジャズベーシストの男と、バーで知り合った女。会話のセッションが、大阪の片隅で生きる2人の人生を淡く照らす。表題作ほか全2編を収録した、哀感溢れる都市小説集。
『新潮』掲載を単行本化。
著者紹介
龍谷大・社会・教員,専:社会学,差別論,民族論,生活史方法論,文博
恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。
恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。
林 伸次
内容紹介
人はなぜ、バーテンダーに忘れたくない恋の話をするのだろう? 燃え上がる恋が次第に冷め、恋の秋がやってきたと嘆く女性。1年間だけと決めた不倫の恋…。渋谷のバー店主が綴る、カウンターの向こうのラブストーリー。
著者紹介
1969年徳島県生まれ。レコード屋勤務などを経て、渋谷にbar bossaをオープン。選曲CD、CDライナー執筆多数。著書に「バーのマスターは、「おかわり」をすすめない」など。
場所はバー、聞き手はバーテン、流れる曲はレコードから流れるオールディーズ。そこで語られる話は切なかったり、きゅんとしたり、ほろっとしたり。いろいろな恋の話がぎゅっと詰まって、曲とリンクするのがなんとも心地いい。伏線が回収されたり、最後の一文まで気が抜けない素敵な一冊。
情事
情事
森 瑤子
内容紹介
「自分が、若さを奪い取られつつあると感じるようになると、反対に、性愛に対する欲望と飢えが強まっていった。セックスを反吐が出るまでやりぬいてみたいという、剥きだしの欲望から一瞬たりとも心を外らすことができない期間があった」
夏の終わり、夕暮が突然輝きを失い、若さへの不安が私を奔放な性に駆りたてる。情事をひたすら追求して”すばる文学賞”を受賞した話題作。「誘惑」も併載。
知らない言葉や食べ物がいくつも出てくる文学的な一冊。海外や外国人とのつきあいが多い著者ならではの言い回しが外国文学を読んでいるかのよう。
奇貨
奇貨
松浦 理英子
内容紹介
「恋人と女同士のようにつき合いたい」と望む中年男・本田と、レズビアン七島の女同士の世界とが織り成す、類い稀なる男と女、女と女の友愛小説と、著者26歳の時に書かれた危うい思春期小説を併録。
自分にとって奇貨と思うものを失くすことは、その価値以上にダメージが大きい。主人公の喪失感が言葉にできない哀しみを誘い、読後に呆けてしまう一冊。
ペインレス 上
ペインレス 上
天童 荒太
内容紹介
医師として診察したいんです。あなたのセックスを-。テロによって体の痛みを失った青年は、女性麻酔科医にとって舌なめずりするような実験台だった-。構想20年の長編小説。
『新潮』連載に加筆訂正して単行本化。
この作品は「痛み」を中心に話が進む。「生命体は痛みを嫌い、かつ他の生命体に痛みを与えることによって、自己を守る…。人間も同様で、世界の安定と混乱も、個人の服従と反逆も、同じ原理のうちにあるだろう。」文中に多く表現される痛みと人間の本質のつながりを読んでいくうちに、心や体に痛みを感じない人間が増えたり、コンピューターが擬人化され共存していくようになったら、どう世界は変わっていくんだろうと感じた。それが、作中で言う「進化」なのかもしれない。分厚くて、文字が多く、医療用語も出てきて難解だが、ぜひ読んでみてほしい一冊。
ペインレス 下
ペインレス 下
天童 荒太
内容紹介
心の痛みのない女性麻酔科医と、体の痛みを失った青年。そこに愛は生まれるのか? 進化の扉は開かれるのか? 倫理や常識を超え、今、DNAの壁が決壊する-。構想20年の長編小説。
『新潮』連載に加筆訂正して単行本化。
疼くひと
疼くひと
松井 久子
内容紹介
古稀を迎えた脚本家・唐沢燿子の生活は、SNSで年下の男と出会い一変する。
男の言葉に一喜一憂するうちに、身も心も溺れていき…。人生後半から燃え上がる、大人の恋を描く。
著者紹介
映画監督,プロデューサー,(株)エッセン・コミュニケーションズ,俳優プロダクション「(有)イフ」設立,元・雑誌ライター
古稀を迎えひとりの暮らしを丁寧に過ごす女性が主人公の本。
「老い」と「セクシャリティ」を主題に、映画やドラマではできない表現を作りたいと著者が言うように、さすが著者はドラマの脚本家、文字に力がある。
作る料理はどれも美味しそうだし、感情や恋愛のどれもが生生しく描かれ、手を止めることなく一気に読んでしまった。エロい。
まったりとした大阪弁の会話や思いが妙に心地よく、登場人物らとともにそこにいるような没入感がある。くたびれているときに読みたい一冊。そして女性のイメージが私はなんだかずっとヒコロヒーだった。