青年男女が主人公の小説2

青年男女が主人公の小説を集めました。第2弾の著者は、タナダユキ、白河三兎、高瀬ちひろ、島本理生、伊坂幸太郎、藤本ひとみ、はらだみずき、朱野帰子、木村紅、山内マリコ、千加野あい。


百万円と苦虫女


百万円と苦虫女
タナダ ユキ

 
内容紹介
ひょんなことから前科者になってしまい、どこにいても所在がない鈴子は、百万円貯めては住処を転々とすることに。そんな彼女を待ち受けているものとは…。うまく生きられない女の子の、ほろ苦くも優しい気持ちになる恋物語。

人は簡単に間違い、見失う。後悔と切なさと割り切りが交錯した一冊。映画化され蒼井優が見事雰囲気たっぷりに演じたが、文庫本巻末の蒼井優解説を読むと、なんとビックリ、蒼井優で映画を作るという目的でアテ書きされた小説だという。そりゃ名演間違いないわけだ。映画とセットで見たい本。


君のために今は回る


君のために今は回る
白河 三兎

 
内容紹介
わたしが観覧車の幽霊になって随分時間が経ちました。この観覧車には変わった人がいっぱい乗ってきます。みんな必死にくるくる生きてる-。すれ違う人々の人生と運命を乗せて、回り続ける観覧車の物語。
 
著者情報
2009年「プールの底に眠る」でメフィスト賞を受賞しデビュー。ほかの著書に「私を知らないで」「他に好きな人がいるから」など。

切ない環境と人間観察。繋がる人と人。ラストはやっぱり切ない。


永遠のかけら


永遠のかけら
高瀬 ちひろ

 
内容紹介
希之果は、子供のときから、ひとを好きになる気持ちがどうしてもわからなかった。そんな彼女に、たったひとりだけわすれられない男性がいる。突然、再会することになった彼の前で、希之果は動揺する。
 
著者情報
1971年東京生まれ。「踊るナマズ」で第29回すばる文学賞を受賞。

不器用な人間たちの不器用な生き様。考えすぎちゃうって、時には損だよなあ、、、

MEMO

『忘れられないのは、幸せなのかな、それとも不幸せなのかな』
この人は、幸せになりたいから生きているんじゃなくて、忘れられないから生きている、そんな人種だろうと思った。

MEMO

次々に恋をできるのは、誰かに側にいてほしい弱さと、そのために他人との関係に飛び込んでいく強さが必要で、弱さは強さを引き出す力になっている。

MEMO

ある特別な『リアル』は、他のものをかすませてしまうのかもしれない。そんな特別な『リアル』を持ってしまったことが、幸せなのか不幸なのか、私には見当もつかないのだった。

MEMO

『あんたは、いろいろ悩む子だからねえ。自分の納得できる道を選びなさいよ。』


夜はおしまい


夜はおしまい
島本 理生

 
内容紹介
ミスコンで無遠慮に価値をつけられる私。お金のために愛人業をする私。夫とはセックスしたくない私…。秘密を抱える神父・金井のもとを訪れる4人の女性。逃げ道のない女という性を抉るように描く。
『群像』掲載を単行本化。

MEMO

私の時間をどう使うかは、私の自由ですよ。

MEMO

天国も地獄も、今生きている人間のためのものです。人が刹那的になることなく、次の世代のために良きものをつなぐことができるように。

MEMO

真顔で言われて、逃げなきゃ、と始めて強く思った。ユダのように。きっとユダは引いたのだ。うわあ、なんでこの人たちってこんなに信じちゃってだろう、なんの根拠もないのに。

MEMO

悪魔といえば恐ろしいものに聞こえるでしょうが、それは人間の自由意思が姿を変えたものでもあります。もしかしたら本来は神よりも悪魔のほうがずっと人に近いのかもしれません。

MEMO

緊張状態のときには、不調は封じ込められてますから。調子を崩すのは、問題から解放された後ですものね。


アイネクライネナハトムジーク


アイネクライネナハトムジーク
伊坂 幸太郎

 
内容紹介
奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、他力本願で恋をしようとする青年、元いじめっこへの復讐を企てるOL…。情けないけど、愛おしい。ごく普通の人たちが巻き起こす、小さな奇跡の物語。魔法のような連作短編集。

6作品が収録。それぞれの物語が緻密につながっていてもう一度見返してしまう連作短編集だった。


快楽革命オデパン


快楽革命オデパン
藤本 ひとみ

 
内容紹介
大企業の役員ジュニアたちが集う高級社交クラブ・オデパン。農家を借り切ってのスリー・ベリー・パーティ、オペラの上演…贅を凝らし知恵を駆使して遊び続けるオデパンの女王・真織のもとにある日一通のメールが届けられた―時代も、企業も、新しい血を必要としている。望む人生を手に入れるため、真織はしなやかに前進する。

番外編の香水物語では、素敵な恋人に不釣り合いな普通すぎる自分は遊ばれていると思い込み、自分から別れを切り出す主人公が健気でならない。まだ好きで憧れている。自分自身に言い訳をしながら、自分をごまかしてズルズルと付き合い続けてしまわないためには、引き返せないような行動に出る必要がある、と決意すること自体が辛く自分を傷つけていてかなしい。でも、ハッピーエンドになってよかった。よかった。。。


ようこそ、バー・ピノッキオへ


ようこそ、バー・ピノッキオへ
はらだ みずき

 
内容紹介
白髪の無口なマスターが営む「バー・ピノッキオ」には、連日、仕事や恋愛に悩む客がやってくる。彼らは店での偶然の出会いによって、それぞれの「幸せな記憶」を呼び醒ましていき…。バーに集う人々が織りなす大人味の物語。

MEMO

自分の人生のなかで「一番幸せを感じた瞬間」はなにか? それは、その人の幸せの物差しを知るためのクエスチョン。

MEMO

祖母はなぜ昔話ばかりするのか。それは惚けているからではなく、彼女には語るべき未来がないからだ。彼女にとって、過去こそが自分の人生であり、大切な宝物なのだろう。

MEMO

英名で言うところのマーガレットであるマルガリータは、カクテルのなかでは最もセンチメンタルに語られる有名な説があります。最も一般的な説とされるのは、1949年にロサンゼルスのバーテンダー、ジャン・デュレッサー氏が創作し、米国でのカクテル・コンクールで優勝した作品であるというもの。カクテルの名、マルガリータとは、デュレッサー氏の若かりし頃の恋人の名前で、運悪く猟場で流れ弾に当たって亡くなったその恋人を偲んでつくられたと言われています。

MEMO

人は、自分にとって最高の瞬間を更新するために生きているのかもしれない。あるいは、人にはそれぞれ人生で最高の瞬間があって、その日の記憶を、明かりや杖として、困難な人生を歩き続けるのだろうか。


わたし、定時で帰ります。


わたし、定時で帰ります。
朱野 帰子

 
内容紹介
絶対に残業しないと決めている結衣。そんな彼女の前に、無茶な仕事を振って部下を潰すというブラック上司が現れて…。新時代を告げるお仕事小説。
『yomyom』連載を加筆し書籍化。ジャケット裏面にも赤裸々な本音を掲載。

残業しなきゃいけない環境と雰囲気を味わったことのある人なら気持ちがわかるすぎるだけに、それはヤバイよどうなっちゃうの?とどんどん読み進んでいっちゃう一冊。ラストにかけてちょっと泣いた。結末は現実的で大人、ハッピーエンド大団円じゃないところが好ましく思った。面白かった。


風化する女


風化する女
木村 紅

 
内容紹介
れい子さんは、ひとりぼっちで死んでいった。不在の女の「別の顔」を探して、れい子さんになり代わろうとした私は、初めてのひとり旅に出た-。表題作ほか「海行き」を収録。
『文學界』掲載を単行本化。

いわゆるOLを満喫している女子と馴染むより一人でいた方が楽、そんな共通点がある人なら付かず離れず仲良くなれる。そのよく知らない程よい距離感があとあとになって謎を孕んでいく不思議な話。感情のもやもやが停滞し続けるも何だか分かるから気持ち悪さはない一冊気持ち悪さはない一冊。


ここは退屈迎えに来て


ここは退屈迎えに来て
山内 マリコ

 
内容紹介
ぼんやりトボケた地方のユルさの、なんとも言えない侘びしさ。くすくすと笑いが止まらないのに、いつのまにか切なくなる…。地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。

特にこれといって何があるわけでもない地方都市で過ごす退屈な日々と都会へ憧れ。出ていった人と逃げ帰ってきた人への何ともいえない感情。私も地方出身だからこの空気感すごくわかる。もやぁ~っとしつつも陰鬱で湿った地方感情が詰まった濃厚な一冊。


どうしようもなくさみしい夜に


どうしようもなくさみしい夜に
千加野 あい

 
内容紹介
高校入学の一週間前、風俗の仕事で一人息子の夏季を養ってきた母が、結婚したいと言い出して…。
R-18文学賞友近賞受賞作「今はまだ言えない」など全5編を収録。『小説新潮』等掲載に書下ろしを加えて単行本化。

著者紹介
千葉県生まれ。「女による女のためのR-18文学賞」友近賞受賞。

風俗の仕事をとりまく人間関係をリアルに描いた短編集。親子や友人、恋愛関係にある人やお客さん…それぞれ立場によって思うことが違うし、求めるものも違うんだなあと身に染みる一冊。偏見なしで読んでほしい。


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